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わいわい通信

2014年02月01日

桑江智久「沖縄闘争の新たな発展のために」を読んで

桑江智久「沖縄闘争の新たな発展のために」を読んで
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 今号は後半に花山君の報告を載せています。併せてお読み下さい。

 『展望』13号の桑江智久「沖縄闘争の新たな発展のために」で 71年の7.7思想は血債主義で、それは労働者蔑視につながるものだから07年の新7月テーゼで論を立てねばならないとしている中央派(安田派)の沖縄闘争論をコテンパに批判しています。
 もともと、私たち中核派は69年以降「沖縄奪還」を唱えてきましたが これは本土の(党派としての)高見に立った発言で 7.7思想から言えば当然訂正されるべきものでした。だから 07年の中央派との分裂後、再建協は「沖縄の自決・自己決定権を支持する」という立場に転換しました。だが「沖縄の自決・自己決定権を支持する」は 抽象的・一般論的には正しいですが 現にいま沖縄で論争されている「沖縄独立論」についてどう応えるのかが問われていると思います。桑江論文は あえて極論すれば 沖縄の独立には反対しているのではないかと読み取れ、「沖縄の自決・自己決定権を支持する」のベクトルを否定している様に感じられ 折角過去の誤りを訂正したのに何で後戻りするのという感想・疑問をもちました。

 70年の華青闘の批判に応えた7.7思想の意義として 筆者は
  「被差別・被抑圧の問題をプロレタリア革命の正面課題としてすえたことにある。2  つの側面がある。第1に、被差別・被抑圧人民を革命主体として認めたこと。第2に  は、労働者階級が真に革命主体になるためには、被差別・被抑圧の課題を自らの課題  として引き受けて闘い、自らを階級として形成することを不可欠のこととして明確化  したことである。」(P75)
と核心的にまとめています。
 論点はこの通りだと思いますが 表現として 「革命主体として認めた」の認めた主語は誰なのかです。おそらくわれわれ=党であると思います。革命の主体か否かは 党が認めた認めないと言える問題ではなく その人たちが今の社会のあり方を変えようと決起しているかどうかなのです。そもそも7.7自己批判は 被差別・被抑圧民衆の闘いを無自覚あるいは無視してきたこれまでの誤りを指摘され、その反省として提起したのだから 「認めた」ではなく「認識させられた」と言うべきものです。それを「認めた」と言うと「判断するのは党である」と言っていることになり 革命の主体が階級・民衆であることを否定していることになってしまいます。これでは 中央派(安田派)やスターリン主義の党絶対化と変わらないと思います。

 沖縄独立論については
  「…、沖縄人民の自己解放的要求が沖縄独立論として台頭してくることは、ある意味  で必然であるといえる。… しかしながら沖縄人民にとって、日本に対する不信が絶  望となって固定化し、沖縄独立が沖縄の歴史的解放の実現されるべき究極の目標とさ  れることに対しては、われわれははっきり言ってそれは誤謬であると批判せざるをえ  ないと。」(P78)
  「沖縄人民の自決・自己決定権はどのように貫徹されるものなのか。それは沖縄人民  が真に自由な自己決定を貫くことができるような解放性をもつ政治空間が必要であり、  沖縄人民が必要と思えば、沖縄における人民権力の樹立が、日本政府の根底的転覆に  先んじて行われることも大いにあるということでなければならず、総じてわれわれは、  沖縄人民の根源的要求を日本の労働者階級・人民自身の要求としてはっきりと掴み取  ることにある。」(P82)
と展開しています。
 誰が「沖縄独立が…究極の目標」と言っているのかです。沖縄の人は米軍基地をなくしたいから独立を唱えているのです。米軍基地の存在を容認した上で沖縄の独立を唱えている人はいないと思います。沖縄の人々は 日本政府が沖縄の代理人として米帝と交渉しないから 日本政府を沖縄の代表とは認めない、つまり独立を唱えているのです。抽象論議としては「究極の目標」にしていると言える面もあるかもしれませんが 現実の運動としては有りえない話です。
 「沖縄の独立が究極の目標」という断定の仕方(ワラ人形的やり方)は 論文で批判している安田派と同じで 現実の闘いがもつ過渡的水路性を否定するやり方です。
 そもそも 民族自決権は 資本主義下での少数民族の権利としてあるものです。われわれは 資本主義での権利だから賛成しているのではありません。独立を勝ちとったとき 第1に 民衆はより深く自己決定権の行使に向かって突き進むことは明らかです。第2に植民地などの独立は 帝国主義の侵略・支配を喰い破ったということであり 帝国主義自身を危機に追いやることになります。つまり 民族自決権は革命に向かう過渡的水路だから 賛成しているのです。
 レーニンは『社会主義と戦争』などで 帝国主義と植民地・後進国あるいは帝国主義と民衆とを必ず区別して論じています。例えば戦争でも 戦争一般が悪いと論じるのではなく 帝国主義の戦争は悪いが、民衆の支配者を倒す戦争(革命戦争)は正しいと展開しています。この視点を見失って、抽象的あるいは一般論として論じたら マルクス主義ではなくブルジョア的改良主義になってしまいます。
 また
  「沖縄人民のたたかいを単に『民族の自決』という方向に絞り上げるのではなく、自  決・自己決定権は沖縄人民の自明の権利としてあり、日本政府の構造的差別政策の粉  砕(日米安保体制の打破)、沖縄を差別することによってしか成り立ちえない日本政  府なら、それを打倒していくたたかい、そしてそうした政治空間の中で『沖縄を沖縄  人民の手に奪い返すたたかい』として自己決定権を行使していくという闘い方。沖縄  人民が『基地全面撤去のための手段として』闘い、日本の全労働者階級・人民の階級  的決起と闘い、その中でその内容と方向が勝ち取れる。日本―沖縄関係の変革=新た  な構築として、安保(安保―沖縄)闘争の新たな発展、日米安保体制を日本・沖縄労  働者のたたかいで打ち壊していく、米軍基地を全面撤去させるたたかいとして実現し  ていくことでなければならない。」(P82)
と展開しています。
 すでに指摘したように ここでも 「『民族の自決』という方向に絞り上げるのではなく」と述べています。絞っている人は誰もいないし 仮に絞ったとしても現下の状況では間違いではありません。
 民主主義は 民衆の自己決定権の行使のためには直接民主主義でなければならず 間接民主主義は 民衆ではなく支配者(支配階級)のためのものであり 支配者が 民衆の意見を聞いているかのようなフリをして、民衆を裏切るためのものです。だから 選挙区は小さいほど直接民主主義が可能となります(大きいと不可能です)。つまり 一般論としても 独立した方が 直接民主主義(自己決定権の行使)に移行しやすいのです。
 P82に「沖縄人民が真に自由な自己決定を貫くことができるような解放性をもつ政治空間が必要であり」「沖縄における人民権力の樹立が、日本政府の根底的転覆に先んじて行われることも大いにあるということでなければならず」と書かれていますが これでは日本革命(の直前)まで沖縄の自決は有り得ないと述べているようなものです。
 そもそも 沖縄が独立したとき米軍基地はこれまで通り沖縄に存在できるのか という論点がポイントです。形式的には 日米安保条約はアメリカと日本との条約であって 独立した沖縄には適用できないので 当然米軍は(自衛隊も)沖縄には存在できません。だから 日本政府だけでなく米軍・米政府も 沖縄の独立には絶対反対で 独立を阻止するためにあの手この手を使って攻撃してくると思います。だから 沖縄の独立が勝ち取られたときには 「解放性をもつ政治空間」を沖縄の人々は自らの手にしているのです。「解放性をもつ政治空間」がなければ独立は無理という主張は スタティックで、論理がまったく転倒していると思います。
 本土の人が「沖縄の独立」を唱えると 沖縄に対して無関心・無責任だ、本土の差別性・加害者性をとらえていないとの批判がでてくると思いますが いま述べたように 日本政府が沖縄の独立を認めることはないので 独立を実現するためには「独立支持」を掲げた本土での広範な闘いが必要になると思います。つまり「沖縄の独立」を掲げた沖縄と本土の連帯行動がおこってくると思います。またそうならない限り沖縄の独立は勝ちとれないと思います。沖縄の闘う人々が「沖縄の独立」を掲げたとき 本土の民衆はそれを支持し その実現のために連帯して闘うべきだと思います。



2014年上期景気動向分析(Ⅰ)
――――――――――――――――              花 山 道 夫
 学習会で花山君が報告したレポートです。少し長いので2回に分けて掲載します。2回に分けた関係で 私の一存で 報告の順通りではなく前後を入れ換えました。[松崎]

Ⅰ はじめに
 安倍政権は、当初は96条の改悪を第一段階とし次のステップで9条を含む全面改憲をもくろんでいたようだが、この方法はハードルが高いと見るや、集団的自衛権の憲法解釈の変更、特定秘密保護法や武器輸出三原則の見直し等の法令や政令運用基準、法解釈の変更を通してなし崩し的に改憲に進む道を選んだようだ。今回の靖国参拝について、これで内閣支持率が下がらなかったらもう一段の踏み込みをやるのではないかという向きもある。今のところ50%台を維持しており、当面は下がりそうにない。その高い支持率は、アベノミクスによって経済が回復しつつあるという幻想が作られていることが背景にある。よって本報告の目的は、金融緩和でインフレ期待(予測)が高まれば消費が増えてデフレから脱却できる、信じる者は救われるという宗教のような説を唱えるリフレ派のトンデモナ理論を徹底的に粉砕することにある。実は安倍政権の最弱の環は経済なのである。このまま進めば必ずや深刻な不況になる。しかし、経済が後退局面になった時に「やはりアベノミクスは間違っていました」ではダメなのである。安倍政権は庶民に対してひどい政策をしていますよと言うだけの水準にとどまっていては勝利の展望は開かないということである。きちんと理論的に批判できていたのかどうかということが重要である。アベノミクスを批判した論考の中に、時としてトンデモナの論証がある。多少の論理展開の甘さ程度のことならとやかく言わない、それは誰でもある。しかし、看過できない場合もある。今回、二点の論考を俎板の上に載せて捌いてみる。この検証過程で理解が深まると確信する。批判こそ理論の最大の源泉である。
 また、これらの論者の中に共通のダラシなさがみられる。それは論拠が示されていないということである。誰でも知っているようなことなら情報源をあえて記す必要はない。しかし、世間一般に流布している説とかけ離れた論理の場合は論証責任があるということを自覚してもらいたい。それを成し遂げるのが理論家の真骨頂である。それがない場合は単に勘違いとして扱われる。ただし、それを信じた人は救われない。受け売りして恥をかく場合もあるから罪作りなものである。

Ⅱ 物価連動国債はインフレ時代の救世主になるか
 この物価連動国債というのは仕組みが分かりにくいので仕組みを解説しておこう。こういう場合間違っている答案の添削をしながら解説をしていくとわかりやすい。今回取り上げるのは、「未来」141号(2013/12/03)に掲載された島本光一氏の「年金を襲うアベノミクス」という論考です。以下問題個所の全文引用。
  「(1) 時事通信は 10月18日、財務省が物価連動国債の発行を5年ぶりに再開す  ることを決定したと報道した。物価連動国債はリーマン・ショックの時に臨時の措置  として発行されたことは殆んど知られていない。
   (2) リーマン・ショック時、元本割れを警戒して投資家の国債購入が激減したため、  国債の投資促進を目的として臨時に発行したのが物価連動国債である。これは (3)国  債価値が下落し元本割れしても、国が元本を増額して、受け取る利益を投資家に保証  するものである。
   これは、国債下落の危機がヒタヒタと押し寄せてきている今、(4)機関投資家=国際  金融資本に対して、万一、元本割れしても受け取る利益は日本政府の責任で元本を増  額してでも保証したということだ。(5)国際金融資本にとって これほど"おいしい話"  は他にない。」  カッコつき数字(1)~(5)は引用者
 まずこれが書かれた日時を特定しておきたい。前の段落で「11月20日の日本経済新聞によれば」という件があるのでそれ以後であることは間違いない。なぜそんなことを問題にするかといえば、11月20日以降に物価連動国債が発行されていたならば、そんなに低い利率で発行されるとは執筆時点では予見できなかったと言えなくもないからです。
 順に追っていこう。
 (1) 情報源を明かすという姿勢はいいのだけれども、なぜ時事通信なのというのが第一の疑問である。時事通信というのは新聞社等の報道機関に配信しているので、個人が直接、情報を入手することはあり得ない。財務省が検討しているならスクープ(特ダネ記事)として時事通信ということもありでしょうが。決定したなら情報源は日本経済新聞や朝日等の新聞社が自然である。インターネットでガセネタをつかまされたのではないかと疑った。
 日本経済新聞 電子版 2013/6/14 23:20 に
  「財務省は14日、物価連動債の発行を10月に再開することを正式に発表した。今  年度分は来年1月と合わせ3千億円ずつ発行し、10月発行分の入札日は7月末に公  表する。同日開いた国債市場に参加する金融機関との会合で、了承を得た。
   物価連動債は元本の金額が物価指数に応じて増減する国債。日本は2003年度に  導入したが、物価上昇予想の低迷で元本割れの恐れが高まり、08年10月以降発行  を停止していた。」
 [図表2つ省略]
 発行を決定したのが2013年6月14日で、実際に発行したのは同年10月8日である。「リーマン・ショックの時に臨時の措置として発行されたことは殆んど知られていない」。こんな珍説は私も初めて聞いたので誰も知らないでしょう[筆者自身が「5年ぶりに再開された」と書いているのに]。インターネットで情報をとるのが間違いなのでなく基本的な知識なり理論は書籍から習得したうえで臨まないととんでもない結末になる。個人で運営しているインターネットでは、たまにデータの間違いとかあるので一次情報源にさかのぼって裏を取るようにしておくほうがよい。
 前回の物価連動国債が打ち止めになったのは2008年8月7日なのでリーマン・ショック(2008年9月15日)は直接には関係ない。
 [以下、当時の経過説明は省略します。花山君の08年のレポートを参照して下さい]
 「100年に一度の危機」という時になぜインフレ時に対応した国債が必要なのですか。心配しないといけないのはデフレでしょうが。例えば16回債を100億円買ったとして翌年1%物価が下がったとすると表面利率が1.4%で、想定元本が99億円に下るので1年目の利息の受け取りは 99×1.4%=1.38億円。10年後に物価指数が基準年より10%ポイント下がっていれば元本返済は90億円になる。10%上がっていれば110億円の返済になる。こういう状況の時には、投資家はリスク・オンからリスク・オフに切り替えるのが普通だ。ハイリスク・ハイリターン(例えば株式)からローリスク・ローリターン(債権等)という訳だ。293回債(2008年6月)から304回債(2009年10月) にかけて表面利率は若干低下している。利率が下がるということは需要が増えているということなのである。また本当にピンチになったら、札割れといって、発行予定額より応募額が少なくなる。実際はそんなことは事前にわかるから発行予定額を減らす。ごらんのとおり発行予定額は変わらず、応札倍率も低い時で1.92倍、高い時で3.19倍ある。だから、(2)の内容は真逆である。
 今回、一段の金融緩和でインフレの芽もあるかなということで再発行されることになったが、応札するほうもインフレになるか疑心暗鬼なのでもしデフレになっても償還時の元本は保証しますよということになったのである。多少、日銀に信用が残っているということです。黒田総裁頑張れ、信用があるうちはインフレにはならないぞ!
 ただし、世の中そんなうまい話はない。第16回(2008年8月)物価連動債の表面利率が 1.4%に対して第295回(2008年8月)10年債の表面利率は1.5%と その差わずか0.1%しかない。ところが、今回13年10月8日に発行された物価連動債の表面利率はわずか0.1%で、中期国債2年物の水準である。10月1日に入札が行われた第330回債10年物の表面利率0.682%なので差額は0.582%、しかし倍率では6.82倍である。直感的には理解しがたいのですが、これは消費税10%の増額を織り込んだ数字だそうです。消費税10%の段階でインフレ率0.7%に相当するということですが、それでもかなりインフレにならないと合わない水準である。
 (3)国債価格が下落し元本割れしても、国が元本を増額するということを保証しているわけではありません。あくまで償還時の元本を保証しているだけです。100円のモノを104円で買った時点で元本割れしています。解らなかったら買ってみなさいと言いたいところですが、現状では個人は買えません。
 (4)機関投資家=国際金融資本、この等号(=)が意味不明である。一般的には、機関投資家といったら日本生命、損保ジャパン、年金積立金管理運用独立行政法人などであるが、前二者は国際金融資本といってもいいが後者は国際金融資本とは言えないのではないか。機関投資家でありなおかつ国際金融資本である場合もあるが、イコールで結んではいけません。なお年金積立金管理運用法人は約120兆円の積立金を運用しているが、昨年は株高で18兆円増加して過去最高の18%の利回りに達する見込みと報道されている。国債での運用が必ずしも安全とは言えない状況が迫っているなか、物価連動債はローリスク・ローリターンなので普通の国債より多少年金基金向けかもしれません。事実、世界の年金基金は物価連動債で運用しているのが多いそうです。
 最後に (5)国際金融資本にとってこれほど"おいしい話"は他にないについてダメ押しをしておく。すでに見てきたように17回債、表面利率0.1%を104円で落札した段階で利回りは0.0955%に下がっているわけですから、預金取り扱いの金融機関は手を出しません、なぜなら日銀の当座預金に預けているだけで0.1%の利息が保障されているからである。はっきり言えることは、おいしい話というのには程遠いということは言える。最後までおかしい話であった。

Ⅲ もっとおかしい話
 「展望」第13号に「戦争・改憲に突き進む安倍政権打倒」第一章(落合薫氏執筆)の4節に「最悪のシナリオ=『ネバダ・レポート』」というのがあって、その節を「今始まっているのはネバダ・レポートの最悪のシナリオの序曲である」と締めくくっている。
  「2001年、日本の財政破綻を見越して、国際通貨基金(IMF)は日本の債権管理  のためのシナリオを作成した。これがネバダ・レポートといわれている。
   それはIMFの最大出資国で事実上の支配権をにぎるアメリカが、世界経済の最後  的な危機の爆発を食い止めるため、むしろそれをチャンスとして日本の金融財政を支  配するために計画したものである。
   すでに韓国、アルゼンチン、ギリシャに適用されているIMF管理は労働者人民に  塗炭の苦しみを強制する措置である。これと同様の措置を帝国主義国である日本に適  用しようとしているのである。
   そこでは次のような項目が挙げられている。
  ① 公務員の人員の総数を30%カット。賃金は30%カット。一時金はすべてカット。
  ② 公務員の退職金は100%カット。
  ③ 年金は一律30%カット。
  ④ 国債の利払いは5~10年間停止。
  ⑤ 消費税を20%に引き上げ。
  ⑥ 所得税の課税最低限を年収100万円まで引き下げ。
  ⑦ 資産税を導入して不動産には公示価格の5%を課税。債権・社債にはついては5~   15%の課税。株式は所得金額の1%を課税。
  ⑧ 預金は一律1000万円以上のペイオフを実施。第2段階として 預金額の30~   40%を財産税として没収する。
   これらの措置については、すでに実施され始めているものもある。しかし、アメリ  カの支配階級と金融資本が最終的にねらうのは、預貯金を封鎖して、労働者人民にツ  ケを回して、日本を完全な金融的従属国にすることであろう。」
 私はこれを見たとき、2006年にガセメールで国会議員を辞める羽目になった「永田メール」事件を思い出した。これははっきり言って怪文書(発信者不明)である。一応、IMFと日本経済新聞の電子版で検索をかけたが出てこない。落合氏が本物というなら証拠を示してもらいたい。私がこれをガセネタと判断した根拠は、これを書いた人が経済に疎いということです。IMFが組織としては言うまでもなく、関係者がこんな内容の文書を出すわけがない。内容については後で逐一検討していくが、その前にIMFについて簡単に解説しておく。
 IMFの概要(2013年9月)
 加盟国数は188ヶ国、本部はワシントンD.Cにあり専務理事はクリスティーヌ・ラガルド、副専務理事は4人おり、うち筆頭副専務理事は元米財務次官デビット・リプトン、また副専務理事の一人は日本の財務官退職後の指定席になっており現在は篠原尚之が務めている。24名いる理事のうち1名も日本に割り当てられている。財務省からの出向者の指定席である。スタッフは154ヶ国より約2,670人、内50名以上が日本人ということである。出資割当額(クォータ)総計3,600億米ドル。出資割合は米17.67%、日6.56%、独6.11%、英4.51%、仏4.51%、中4.00%である。合意済融資2,330億ドルうち融資未実行残高1,620億ドル、最大借入国はギリシャ、ポルトガル、アイルランドである。またサーベイランス(政策監視)と呼ばれる活動もやっており加盟国に政策[報告]を行っており、日本にも年次審査報告書というのが出されているが、財務省の役人の作文なのであまり話題にもならない。財源は主としてクォータから提供される。融資財源は7,500億米ドルへ増額することは決定しているが、現在のところ約2,500億米ドルである。
 以上みてきたように、第二位の株主であり役員も出している日本に勝手にレポートなど出せるわけがないということは大体お分かりいただけたと思います。
 ネバダ・レポートの実現可能性の検討
 ①②③の実行には法律が必要だが その法案の成立は不可能に近い。
 ④国債発行額は181兆円。利払いを停止すれば新規発行も停止せざるを得ない。利払い停止しますが新規に借金させてくださいなどというたわけた話が通るわけがない。つまり予算も執行できないことを意味する。そもそもIMFは通貨発行権がないのだから、日本に融資する場合は円に換えないといけないので、日銀で振替する必要がある。まあここまで来たら国際金融資本が世界恐慌でつぶれます。その前にIMFが持たない。
 ⑤これは将来的にはありうるかもしれない。
 ⑥所得税の課税最低限という場合、単身者なのか夫婦なのか、子供がいるのかまた子供がいても年齢によって違う。単身者の場合財務省の試算では、給与所得控除65万円+基礎控除38万円+社会保険控除11.4万円=114万4千円になっているが、自営業者の場合は青色申告をすれば65万円の控除があるが、白色申告の場合はない。社会保険もおさめてない場合は基礎控除の38万円のみになるので、これを基準にすると引き上げになるので助かるのですが。定義はしっかりしないといけない。
 ⑦現行法制度を全く理解していない。公示価格というのは全国の基準地点を選んで国土交通省が毎年発表している基準地の価格のことで、これを参考にすべての道路に面する地価(路線価 およそ公示地価の70%といわれている)を市町村が決定し、個々の地価の価格を固定資産台帳に登録して課税している。つまり公示地価は特定の地点だけなので、これで課税できるわけではない。また市街化区域はさらに0.3%(最高税額)の都市計画税が課せられる。なおこの税率を上げると国税収入は減る。なぜか、業務用の土地については経費(租税公課)として控除できるから所得金額が減る(地方税から国税に変えれば別ですけど)。借りている場合も地代家賃が上がるから同じである。勘定科目が変わるだけである。
 債権・社債については、個人・法人また利子に対する税額と売却益に対する税額が異なる。また利付債なのか割引債なのかによっても違う。利付債の利子については個人・法人とも源泉分離課税の場合は20%である。株式については本則では20%であったが2009年から2013年のあいだは10%に下げられていたが、本年2014年1月1日から配当金・売買益とも20%に戻る。ただし正確にいうと、2013年1月1日から2037年12月31日までは復興特別所得税の対象となるため、2013年は10.147%、2014年以降は20.315%の税率となる。
 ⑧ペイオフというのは、金融機関が経営破綻したとき1000万円までの元本と利息分を預金保険機構が代わりに払いますが、それ以上はオフ(切り離す)という制度である。90年代に金融機関の破綻が相次いだことから全額払うことになっていたが、2005年4月以降は元に戻った。ただし、当座預金等の無利息の分については現行も全額保証となっている。次の第2段階というのはペイオフした残りの30~40%から没収するのか、全部の預金から没収するのかが不明ですが、計算の都合上預金全部から30%没収するとして計算します。預金残高は銀行が634兆円、信用金庫が127兆円、(信用組合、郵貯、農協、労金がありますが、この際除外します)なので合計761兆円となります。この中に公的預金・政府関係預かり金が21兆円ありますが、これも当然没収ですよね。30%没収すると228兆円が政府に手に入ります。ただし、21兆円マイナスなので、純増207兆円です。これで当分安心ですね。
 当然こういう政策を発表した段階でいろいろな動きが出る。例えば取り付け騒ぎや資金の金へのシフト、海外へのキャピタルフライト。それを防ぐには即日実行するしかないがその場合は憲法を停止し、自衛隊が出動し戒厳令を布告する必要がある。しかし、アメリカが当然反対する(⑧の内容は資本主義の停止を意味する)ので日米両軍が戦闘状態に陥る可能性がある。つまり自民党政権下ではこういう事態は起こりえないということです。
 最大の謎は、落合氏がなぜ2001年に公表されたものを今頃取り上げたのかということです。
 そもそもIMFは外貨準備不足で流動性が枯渇した場合、資金を供給するというのが本来の役割なので、外貨準備高世界第二位(一位は中国)、対外資産世界第一位の国がIMFから援助を受けるというのはあり得ない。ギリシャは財政赤字(国債はユーロ建)が原因でIMFの援助を受けたが、ギリシャ政府にユーロの通貨発行権はないからなのである。ユーロの発行権はECB(欧州中央銀行)にある。韓国がIMFの援助を受けたのは経常収支の赤字が続いたためである。タイの場合はまた少し違うが、タイも韓国も短期資金で借り入れたため資金ショートした。日本の場合は、国際機関からの介入によって体質を変えるという方策をとれないために傷口がさらに広がっていって手におえなくなるという可能性は高い。次号(Ⅱ)ではそのあたりのところを検証していく。
  ■ 参考文献 (Ⅰ・Ⅱ併せて)
  池尾和人 (2013)『連続講義・デフレと経済政策』
  猪木武徳 (2009)『戦後世界経済史』 中央公論新社
  翁 邦雄 (2013)『日本銀行』 筑摩書房
  小幡績  (2013)『ハイ・ブリッドバブル』 ダイヤモンド社
  白川方明 (2008)『現代の金融政策 理論と実際』 日本経済新聞出版
  田中秀明 (2013)『経済セミナーNo.674/2013年10・11月号』 日本評論社
  野口悠紀雄(2013)『虚構のアベノミクス』 ダイヤモンド社





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