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わいわい通信

2013年04月01日

士農工商という身分制度

士農工商という身分制度
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 「江戸時代には士農工商という身分制度があった」と学校で習い、常識化していましたが それがまったくの作り話(ウソ)だったことを知りました。09年12月号の評論で「20世紀の常識」には数々のウソが含まれていると書きましたが 士農工商の身分制度もその一つだったのです。もっとも大きなウソは 原発の安全神話と弥生(神話)時代から続くという万世一系の天皇論です。
 先日友人から「士農工商の身分制度など江戸時代にはなく、武士身分・農民身分・町人身分の3身分があり、その身分外として穢多・非人があった」と指摘があり エッ本当なのと驚き 確認のためにネットのウィキペディア(Wikipedia)を見ました。少し長くなりますが抜粋します(短くするため助詞などは変えています)。[ ]内は私の説明です。
 
 「士農工商は、古代中国から用いられた言葉で、紀元前1000年頃に漢書に『士農工商、四民に業あり』とあり、『民』の職業は4種類に大別され、連続して表記することで、あらゆる職業の民、つまり『民全体』または『みんな』といった意味で使われた。
 近世日本では、遅くとも17世紀半ばまでに『士』が武士を意味するように変化した[もとは官吏をさす]。また近代以降には、『士農工商』が近世の身分制とその支配・上下関係を表す用語として認識されるようになった。しかし、1990年代になると近世史の研究が進み、士農工商という身分制度や上下関係は存在しないことが実証的研究から明らかとなり、2000年代には『士農工商』の記述は教科書から外されるようになった。ただ、昭和時代の教育を受けた人を中心に未だ士農工商は身分制として認識されていることがある[私もその一人でした]。
 なお、上記はあくまで近世日本に『士農工商という身分制』が存在しないということであって、『士農工商』という言葉は当時も(本来の意味で)用いられており、『身分制』も存在していることに注意されたい。」
 「兵農分離。徒士や足軽の多くが武装した農民から発生したものであるため、『士』と『農』の違いはかなり曖昧なものであった。その転換期は戦国時代後期である。天正9年(1582年)頃から始まった太閤検地や天正16年(1588年)の刀狩によって、それまで比較的流動性があった武士と百姓が分離され、その職業(身分)が固定化されるようになった。こうした兵農分離政策は江戸時代に強化され、職業は世襲制となった。また、『士』(武士)が『四民』ではなく支配者層として他の三民より上位に置かれた。」ただ「僧侶と医師は例外で、『武家諸法度』によって上級武士以外に乗ることが許されなかった駕籠が認められていた。」
 「江戸時代の身分体系。士農工商の職業概念は実際の身分制度とは大きく異なっている。江戸時代に実際に現れる身分は、『士』(武士)を上位にし、農・商ではなく、『百姓』と『町人』を並べるものであった。また、『工』という概念はなく、町に住む職人は町人、村に住む職人は百姓とされた。百姓を村単位で、町人を町単位で把握し、両者の間に上下関係はなかった。なお、百姓の生業は農業に限られるものではなく、海運業や手工業などによって財を成した者も多くいた。天保13年(1842年)9月の御触書には『百姓の余技として、町人の商売を始めてはならない』とあり、併せて農村出身の奉公人の給金に制限を設けているが、これは農業の衰退に繋がる事を危惧した幕府の対応策であったと考えられる。つまり、江戸時代における百姓とは農業専従者である『農人』ではなく商人・職人を含む農村居住者全般を意味する言葉であった。このように、実際の江戸時代の身分制度は士農工商の職業概念から大きく乖離していた。」
 「近代の身分制度。明治時代になると近代国家に脱皮するため中世封建制社会の身分制度は破棄され、四民平等の政策が採られることになった。ただし、四民以外の支配階層は皇族・華族・士族の称号が付与され、戸籍に明記された。皇族は、戦後の制度にも名をとどめており、天皇及びその親族をさす。華族は、公家と大名に付与された。士族は、華族とされなかった武士。卒族は足軽で、後に解体され平民に編入された。百姓・町人などは一括して『平民』とされた。
 しかし、ここで注意しなければならないのは賎民の扱いである。賎民も平民に組み入れられたが、平民扱いに反対が続出し、新平民という用語が自然発生的に生まれた。」
 「後世のイメージ。明治時代以降の歴史学者は士農工商の言葉を江戸時代の身分制度を表すものと解釈するようになった。そして士農工商は身分の序列を示す概念となり、さらに士農工商に加えて穢多や非人を付けて『士・農・工・商・穢多・非人』という序列があったとする説も生まれた。」
 「1990年代ごろから、こうした士農工商像を批判的に検証し、同時代の一次史料に基づく実証的な研究によって、新たな江戸時代の身分制度像が提示されるようになり、田中圭一は、『本来、士・農・工・商は職分であり、そのような職分を身分制度として説明すること自体がばかげている[ママ]のであるが、書物はいまもそれを変えることをしない』と述べている。」
 「軍隊と部落民。軍人勅諭では階級の絶対性が説かれ、壬申戸籍の族称より階級が優先されるとされ、敗戦まで維持された。教育勅語には部落民に対する差別的表現は一切なく、靖国神社と護国神社では戦死者を階級により祭り、族称は全く無関係である。」[ここの階級は軍隊内の将佐尉曹士(or兵)の階級をさし 身分制度としての階級は族称と述べています]
 
 もともと私は 11年7月号の「部落問題を考える視点」で述べたように 江戸時代の身分制度が「士・農・工・商・穢多・非人」であったという説には疑問を持っていて 天皇制の身分制度(皇族・公家・武士・平民・穢多)と幕府の身分制度(士・農・工・商・非人)の2つの身分制度があって 明治になって幕府の身分制度はなくなったが 国家体制は天皇が統治する形態なので、天皇制の身分制度は存在し 戦後も天皇・皇族が存在する限り身分差別としての部落問題はなくならない という主張でした。だから 江戸時代の「士農工商は[身分ではなく]職分」だという説明には すぐ納得できました。
 友人の指摘は 自分の誤った(常識的)理解を正すきっかけになったので有難かったです。しかし同時に残念に思ったことは ウィキペディアでさえ「皇族・華族・士族・卒族・平民・新平民」の族称が(壬申)戸籍に記載された身分制度だと述べているのに 「武士・農民・町人の3身分があり、その身分外として穢多・非人があった」と天皇と貴族(皇族および華族)をはずしていることです(前提化して言わなかったのだと思いますが)。身分制度を考える場合 民衆内の身分だけを問題にして、支配者層を対象にしなければ 正しく解明することは出来ないと思います。例えば武士。武士の頭領と言われた源氏や平氏は 清和源氏・桓武平氏と呼ばれるように天皇の子孫で 増えすぎた皇族を減らすために臣下に格下げされたのです。天皇をはずして「武士・農民・町人」だけと見たら 武士が天皇の子孫であったこと、言いかえれば身分の根本が天皇制にあることが忘れ去られ 単なる支配階級としての武士としか導き出せません。また部落の起源で言えば 穢多が天皇制の身分だということがはっきりしていれば 「勅命講和以降の一向一揆起源説」が正しいことは論理的に明らかです。中世(室町時代)起源説や江戸時代中期起源説では天皇制との関係はまったく出てこないのですから。逆に言えば 穢多を天皇制の身分と見なさないことは 天皇を問題にしないという天皇制への屈服以外の何ものでもないのです。
 身分制度・部落問題を考える視点は 11年7月号の「部落問題を考える視点」や08年3月号の「戦国大名と賎民」で述べたので 今回は展開しません。過去の「ひとくち評論」は ブログ「資本主義の終わり論」に載せているので 関心のある人はそちらを見て下さい。もちろん幕府の身分制としたところは 身分ではなく職分と読み変えて下さい。
 今回私が再確認したことは この士農工商のウソ・作り話は やはり天皇制がらみだということです。古事記・日本書紀からはじまって今日の歴史教育まで 国家によるウソ・作り話が連綿と続いているのです。日本国=大和朝廷は 中国の統一国家形成からはじきとばされた敗残諸王家が列島に逃げ込み、九州に本拠のあった倭国の勢力圏をさけて出雲・吉備・丹後・河内・大和など各地に「安住の地」を見つけ出し(各大王家) 7世紀後半、倭国崩壊後の覇権争いで成立したのです。その事実をひた隠しにして、弥生時代から続いているというウソ・作り話で支配の正当性を語っているのですから 脆弱以外の何ものでもありません。第二次大戦の敗北で、敗戦後敵であった米軍に助けてくれと真っ先にしがみついた昭和天皇を見よです。さらに言えば 日本のブルジョアジーは 自ら革命する気迫がなく 脆弱な天皇制に頼ってしか資本主義化できなかったのです。戦後も アメリカに依拠することで帝国主義としての再建が可能となったのです。日本の支配階級は脆弱故に現象的には凶暴ですが 民衆がその脆弱性を見抜いたとき崩壊するのです。
 なお 明治のはじめ「賎民も平民に組み入れられたが、平民扱いに反対が続出し、新平民という用語が自然発生的に生まれた」というウィキペディアの説明は 間違っていると思います。解放令の翌年には族称つまり身分を記した壬申戸籍の作成に着手しているのですから 「自然発生的」ではなく、天皇制再確立のために国家権力者が意図的に作ったということです。




Posted by わいわい通信 at 00:04│Comments(0)
 
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